ラズパイのSSH接続設定では、接続先アドレスが変わらないように「IPアドレスの固定化」も行う必要があります。
IPアドレスを固定する方法として、今回は安定運用のためにルーター側で設定することにしました。この場合、特定のデバイスに決まったIPアドレスを割り当てる「DHCP予約」を使うのが定石と思います。しかし、私が使っているのはPR-400KIという古いルーターで、このような便利な機能が備わっていないという問題に直面しました。
本記事では、このような機能に制限のある古いルーターでも、DHCPの割り当て範囲を調整してラズパイ5のIPアドレスを実質的に固定化する方法を紹介します。
今回構築するネットワーク環境について
構築するネットワーク環境の概略
今回のネットワーク環境について簡単に説明します。ラズパイ5のIPアドレスを固定化するために、以下のようなネットワークを構築することにしました。

具体的には、ルーター(PR-400KI)のDHCP割り当て範囲を「192.168.1.21~」に設定し、それより前のアドレスを固定IPとして確保します。つまり、ルーター自身が使用している「192.168.1.1」を除く「192.168.1.2〜20」が、手動でIPアドレスを設定する機器のための範囲となります。
そしてラズパイ5には、この固定IPアドレスの範囲から「192.168.1.10」を割り当てます。DHCPの割り当て範囲外なので、DHCPによって他の機器に同じIPアドレスが配布されることはありません。
このように「DHCP割り当て範囲」を調整することで、PR-400KIのような古いルーター環境でもDHCPアドレスと固定アドレスの範囲を分離しIPアドレスを安全に固定化することが可能になります。
今回の方法を採用した理由
上のように、ルーター側でDHCP割り当て範囲を設定する方法をとった理由は2点あります。
理由1. ラズパイ側のみの設定は安定運用に不向き
ラズパイのIPアドレスを固定化するのに一番簡単でよく知られているのは、ラズパイ本体だけで固定IPを設定する方法です。
私も最初はこれでやろうと思っていましたが、ネットワークトラブルの原因になるので安定運用には向かないということが分かりました。実際、ラズパイの公式ドキュメントでも推奨しないと書かれています。
確かに、この方法では「ラズパイがそのIPを使っていること」をルーターが把握していません。そのため、DHCPで偶然アドレスがダブってしまい通信が不安定になるリスクがあるわけです。簡単な実験程度なら問題ないと思いますが…。私はラズパイ5をサーバー用途で利用する予定なので、今回はルーター側で設定することにしました。
理由2. 古いルーターによる機能制限
私が使っているルーターはNTTのPR-400KIという機種で、もう10年以上使っているものです。

ルーター側で固定IPアドレスを設定する場合、最近のルーターには「DHCP予約」や「DHCP固定割当」といったメニューがありますね。デバイス固有の番号(MACアドレス)を登録しておけば、そのデバイスが繋がるたびにルーターが自動で決まったIPを渡してくれる便利な機能です。これを使えば、比較的簡単にDHCPと固定アドレスを両方使うことができます。
しかしPR-400KI は古い機種なのでこのような機能はなく、「来た順に、この範囲から割り振るよ」という一括管理しかできないようです。
古いルーターではできないのか…と思いましたが、調べてみたところ、DHCP割り当て範囲を調整することで固定IPアドレスとDHCPアドレスを併用する方法があることが分かりました。PR-400KI には以下のような設定項目があり、
- 割り当て開始IPアドレス
- 割り当て個数
これらの設定を使えばDHCP割り当て範囲を調整できます。これでラズパイ5を実質的に固定アドレスで安定運用できそうなので、今回試してみることにしました。
簡単な経緯は以上のとおりです。
それでは、実際の変更手順について「ルーター側(PR-400KI)の設定 → ラズパイ5側の設定」という流れで解説していきます。
ルーター側(PR-400KI)の設定(DHCP範囲の変更)
PR-400KI のDHCP設定を変更し、固定で運用するIPアドレス範囲を確保する手順を解説します。なお、PR-400KIのファームウェアは、2026年4月時点の最新バージョン(08.00.0060)を使用しています。
現在の割り当て状況の確認
まず、現在のIPアドレスの割り当て状況を確認してみます。
ブラウザのアドレス欄に「192.168.1.1」と入力するとログイン画面が表示されるので、IDとパスワードを入力し、ルーターの管理画面にアクセス。
「情報」 → 「DHCPv4サーバ払い出し状況」を開くと、DHCPで割り当てられているIPアドレスの一覧が表示されます。
私の場合、以下のような割り当てになっていました。

謎のデバイスが存在?
当方の環境では、ラズパイ5含めて4台の機器を使っています。
しかし、払い出し状況をみると6個のアドレスが割り当てられていました。このうち、40番台の4つは実際に使っている機器に割り当てられたアドレスでしたが、残りの192.168.1.3と192.168.1.4は何に使っているのか全く心当たりがありません。
ところで、MACアドレスの先頭6文字はベンダーの識別コードになっており、「MACアドレス検索」などを使ってベンダーを調べることができます。
試しにベンダーを調べてみたところ、
- 192.168.1.3 → CHONGQING FUGUI ELECTRONICS
- 192.168.1.4 → Part II Research
だと分かりました。全く知らないベンダーですが、FUGUIの方はルーター製造に関わる中国メーカーのようです。

Part II Researchの方はよく分かりませんでした。
この2つのIPアドレスは、DHCPなのに変わる気配がありません。時間が経っても192.168.1.3と192.168.1.4のままです。
固定アドレスの範囲を決定
当初、固定IPアドレスの範囲としては192.168.1.1~10で考えていました。自分の環境では、固定アドレスが10個程度あれば十分だからです。ただ、192.168.1.3と192.168.1.4の2つが使用済みとしたらもう少し余裕があった方がいいかなと思い、192.168.1.1~20を固定アドレスとして使うことに決めました。
実際の変更手順
それでは、以下のような手順でDHCP範囲を変更します。
「DHCPv4サーバ設定」にアクセス
管理画面から「詳細設定」→「DHCPv4サーバ設定」を開きます。

「開始IPアドレス」と「割り当て個数」を変更
「開始IPアドレス」と「割り当て個数」に所望の値を入力し、DHCPの割り当て範囲を変更します。私は以下のように入力しました。

- 開始IPアドレス : 192.168.1.2 → 192.168.1.21
- 割当て個数 :253 → 234
256 – 2(0と255の予約済みの分) – 20(今回固定で使用する分) = 234
この設定により、以下のIPアドレス範囲が固定アドレスとして確保されます。
192.168.1.1 ~ 192.168.1.20 (192.168.1.1はゲートウェイで使用)
この範囲がDHCPで使われなくなるので、この範囲内でラズパイ5のIPアドレスを設定すれば固定アドレスてとして安全に使用できます。
DHCP範囲は、例えば機器が多い場合
・固定IP:192.168.1.2~49
・DHCP:192.168.1.50~200
のように環境に応じて調整OKです。
設定したらルーターを再起動
設定値を入力したら「設定」をクリックして設定を反映。すると画面上に「機器再起動画面へ」という表示が出てくるので、これをクリック。

その後、画面に「再起動」ボタンが出てくるのでクリックしてルーターを再起動します。
謎のデバイスは?
再起動後しばらく経ってから割り当てを確認すると、変更前の192.168.1.3と192.168.1.4の分の割り当ては無くなっていました。

ただ、192.168.1.3と192.168.1.4へのpingは応答が返ってきたので、相変わらず同じアドレスで存在しているようですね。謎のデバイスですが、作業はこのまま進めます。
ラズパイ5側の設定(GUIから固定IPを設定する)
続いて、ラズパイ5側で固定IPアドレスを設定します。
NetworkManagerを使用する
ラズパイ5で使用される新しいRaspberry Pi OSでは、従来とはネットワーク設定方法が変わり、デフォルトでNetworkManagerというツールを使うようになっています。
Linuxでネットワーク接続(有線LANやWi-Fi)を管理するためのソフトウェアです。
IPアドレスの取得や接続設定を一元的に管理し、GUIやコマンドから簡単に操作できるのが特徴です。
NetworkManagerは、コマンドの他にGUIでも設定可能なため、今回は直観的で分かりやすいGUI画面からの設定を紹介します。
GUI画面からIP固定化する手順
まず、デスクトップ画面右上のネットワークのアイコンをクリックして、「Advanced Options」 → 「接続を編集する」を選択します。

「Network Connections」ウィンドウが出てくるので、使用するWiFiのSSIDを選択して下の歯車マークをクリックします。

選択したSSIDの設定画面が出てきますので、「IPv4設定」タブを開きます。

Methodを「自動(DHCP)」→「手動」に変更します。

続いてAddをクリックし、以下の項目を入力します。
- アドレス : ラズパイ5で使う固定IPアドレス(今回は、192.168.1.10としました)
- ネットマスク : サブネットマスクのビット数 (255.255.255.0なら24と入力)
- ゲートウェイ : デフォルトゲートウェイのIPアドレス
併せて、「DNSサーバー」の項目にIPアドレス(一般的にはデフォルトゲートウェイのIPアドレスと同じ)も入力します。

入力が終わったら「保存」を押し、ラズパイ5を再起動します。
動作確認
再起動後、IPアドレスが固定されているか確認します。
コマンドでもいいですが、上で紹介したNetworkManagerでも確認できます。
先ほどと同じようにデスクトップのネットワークアイコンをクリックし、「Advanced Options」‐「接続情報」を選択します。

以下のように、ネットワーク接続情報が表示されます。

固定アドレスとして設定したIPアドレス(今回は192.168.1.10)になっていればOKです!
まとめ
ラズパイ5のIPアドレスを安定的に固定化する方法について、具体的な設定手順を含めて解説しました。
今回使用している PR-400KI のように、ルーター側にDHCP予約機能が搭載されていない環境もあります。そのような場合でも、DHCPの割り当て範囲を調整することで、固定IPアドレスとDHCPアドレスを安全に共存させることが可能です。
ラズパイ5をサーバー用途などで長時間稼働させる場合、IPアドレスの管理は非常に重要なポイントです。本記事の内容を参考に、自分の環境に合った方法で安全にIPアドレスを固定してみてください。
